連載小説 追憶の旅  「第2章  千晴との出会い」
                                 作:夢野 仲夫

 千晴との出会い146 通算461
  「キャピー、無理をしなくていい。今日は止めよう…。」
  「イヤツ、絶対イヤ!リョウ君が欲しい。リョウ君のすべてが欲しい…。」 千晴は懇願(こんがん)した。
  「この前デートしたとき、リョウ君はわたしのすべてを求めなかった。わたしにはそれだけの魅力がないのかと、ずっと悩んでいたの。」
  「お願い!リョウ君止めないで!あなたを…あなたを…失いそうで…。」 千晴の良への強い執着だった。

 千晴との出会い147 通算462
  「無理をしなくていい、自然にそういう日が来るから…。」
  「ヤダッ!わたし今日は決心しているの。お願い、止めないで… 。」 強い彼女の決意に良は気おされた。何度かの試みで、遂に彼女の体に貫かれた。
  「うれしいッ!リョウ君のすべてを、リョウ君のすべてを…。」 後は言葉にならなかった。 千晴は涙を貯めていた。愛しそうに良は抱きしめた彼女の背中を撫でた。

 千晴との出会い148 通算463
  「リョウ君好き、だ〜い好き、前よりもっともっと好き…。」 彼の深い愛情の験(しるし)を得た歓(よろこ)びがそこにはあった。
  「キャピー背中をかいて…。」
  「うふ、リョウ君って相変わらず子どもみたい。ここでいい?」
  「違うッ、もっと右、そこじゃない、もう少し上…。」 母がわが子を愛おしむような優しい手であった。
 二人は抱き合ったまま、いつしか眠りについた。

 千晴との出会い149 通算464
  「お早う、リョウ君…。」 良が目を覚ますとそこには明るい表情の千晴がいた。
  「レロレロして上げるから起きてね。」 彼女から積極的に唇を求めたが、半ば寝ぼけた状態であった。
  「リョウ君もっと真面目にして。」
  「だって、まだ眠いよ。」 無理に起こされた良は裸のままであった。
 「下着を着て、目のやりどころに困るじゃない…」 ソファの上には良の下着が用意されていた。箪笥(たんす)の中から探して取り出したのだろう。

 千晴との出会い150 通算465
  見ると千晴は昨日着ていたのもとは明らかに違っていた。昨日から着替えを準備していたのだ。千晴の強い決意をそこにも感じざるを得なかった。
 彼は真っ裸でトイレに向かった。
  「リョウ君、恥ずかしいじゃない、下着をつけて。」 目のやりどころに困った千晴が繰り返し訴えても、良は意に介さなかった。
 部屋の中にパンを焼いた匂いが漂っていた。台所のテーブルにはパン、目玉焼きが用意されていたのだ。

 千晴との出会い151 通算466
 それだけではなかった。昨日良が着ていた下着はすべて洗濯されていた。どれだけ彼女は寝たのだろう。良と同じ年齢の彼女はもっと眠ていたいだろうに…。
 献身的な千晴の一面を見た思いであった。
  しかし、昨日までの彼女と今朝の彼女とは明らかに違っていた。良の愛の験(しるし)を得たという自信に満ちているようだった。
  「リョウ君、食べて。」
 「まだ食べられない。さっき起きたばかりだから…。」
 「折角作ったのにぃ。」

 千晴との出会い152 通算467
  「後で食べよう、それよりキャピーを食べたいなぁ。」 千晴は顔を赤らめた。
  「エッチねぇ、リョウ君…。」 その言葉には優しさと自信に満ちていた。
 「じゃ、キャピーはイヤなの?」
 「女にそんなこと聞いてはダメ!」
 「どうやってキャピーを食べようかなぁ?」
 「リョウ君のバーカ…知らない!」 彼は千晴の衣服を脱がせようとした。千晴は彼のなすがままに力を抜いた。

 千晴との出会い153 通算468
 最後の一枚を脱がせると、千晴は両手で下半身を隠したが良は無理やり手を外させた。そこには健康的でバランスのとれた見事なプロポーションの裸体があった。
 「キャピー、キレイだ。眩(まぶ)しいほどキレイだ。」
  「リョウ君は…美津…女性に…いつもこんなことさせるの?」 千晴は美津子との秘め事が聞きたかったのだろう。しかし、彼女の名前を出すのをためらった。
  「君だけ。こんなことは初めて。」  

 千晴との出会い154 通算469
 「ホント?絶対にぃ?」 やや自信を取り戻したのか、彼女は豊かな胸を突き出して見せた。 彼はベッドに横たわった彼女の身体の隅々まで唇を這(は)わせた。
 女の歓(よろこ)びをまだ知らない千晴であったが、「ア〜ン。」と断続的に切ない声を漏(も)らした。ややぎこちないながらも彼女は良を受け入れられた。
  「セックスってこんな風にするんだ。本で読んでいたけど…。」 終わった後で千晴は不思議そうに良に尋ねた。

 千晴との出会い155 通算470
 「俺だってそんなに詳しくないけど、もっともっとあるよ。」
  「どんなこと?リョウ君の知っていることを全部教えてね。」 良は黙って彼女の手を取って彼の下半身を握らせようとした。慌てて手を引っ込めようとしたが、良の寂しげな表情に恐る恐る触れた。
 やがて千晴はそれを愛しく握るようになっていた。 その日は二人にとって決して忘れられない想い出の日になった。


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          第2章 千晴との出会い(BN)
 (0316〜) 華やかなキャピー(佐藤千晴)との出会い「広松食堂」
 (0320〜) 千晴との初めてのデート
 (0329〜) 美しいゆえにに悩むキャピー
 (0351〜) 2回目のデート「蕎麦処 高野」
 (0371〜) 海が見える高台で…
 (0383〜) 手打ちうどんに喜ぶキャピー「手打ちうどん 玉の家」
 (0396〜) 過去に縛られる良への怒り
 (0410〜) ラブホテルでの絆
 (0431〜) 夜の初デート「和風居酒屋 参萬両」
 (0439〜) 良のアパートで…。
 (0471〜) 恵理・美紀と「手打ち蕎麦処 遠山」 
 (0481〜) 美紀のマンションで長い夢
 (0531〜) キャピーと初めての1泊旅行
 (0545〜) 2人で入った寿司屋に美津子が…「寿司 徳岡」
 (0556〜) 美紀と得意先に営業
 (0582〜) キャピーとの別れの真相
 (0611〜) 美紀が恵理に宣戦布告「イタリア料理 ローマ」


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