連載小説 追憶の旅  「第2章  千晴との出会い」
                                 作:夢野 仲夫

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 「…私と同じくらいの年齢のはずなのに…美津子さんは…美津子さんは…リョウ君を好きな私でさえも包み込んでくれそうな優しさで微笑(ほほえ)むの…。」 良だけでなく千晴も美津子の幻影(げんえい)に惑(まど)わされていたのだ。
  「もう少しだけ言わせて。」−良は黙って聞くしかなかった。
  「夢に出てくる美津子さんは…すらっとしていて…透き通る白い肌で…しかも上品な女性。誰でも振り返りそうな雰囲気を持っているステキな女性…。」

 千晴との出会い137 通算452
  「私の勝てるところは何もないの。リョウ君が決して忘れられないのが分かるの…だから…だから…美津子さんを思い浮かべるだけで…リョウ君が去っていきそうで…。」
 むせび泣きながら、千晴は途切れ途切れに、今まで胸に貯めていた思いを打ち明けた。
 彼女の胸の痛みは、良が消し去ることのできない美津子の幻影そのものであった。
  「わたし…美津子さんより前に…リョウ君に…出会いたかった…」

 千晴との出会い138 通算453
  「リョウ君好き!リョウ君大好き!」 胸の内を話して気持ちが楽になったのだろうか、彼女はまるで憑(つ)き物でも落ちたように、一転して彼にしがみついた。
  「レロレロして…」彼女は顎(あご)をあげて目を閉じた。 良が唇を重ねると思いのたけをぶつけるように、彼女から舌を絡(から)めてきた。あまり飲めないビールを飲んだ千晴の口にはわずかにアルコールの匂いが残っていた。

 千晴との出会い139 通算454
  「シャワーを浴びたいわ。」−千晴が挑(いど)むような目で彼を見た。
  「俺、湯に浸(つ)かりたいなぁ。キャピーと一緒に。この前のデートのように…。」
  「エッチ!恥ずかしいこと言わないで…。」 口では否定していても彼女は否定していなかった。
  「俺、湯を入れるから…。」
  「それは私の仕事。リョウ君はゆったりしていてくれればいいの。」 千晴はいそいそと風呂場に向かった。

 千晴との出会い140 通算455
  「キャピー、歯ブラシの買い置きが二、三個あるから好きなのを使って。彼女が二、三人いるから、いつでも泊れるように準備万端。」 呼びかけると千晴が踵(きびす)を返した。
  「リョウ君の意地悪!」 彼女は微笑みながら良の腕をつねって再び風呂場に向かった。
 風呂の準備を済ませてその後歯を磨いたのか、彼女は歯ブラシを持ってきた。
  「リョウ君マジックある?」
  「何に使うの?」
  「女性が来ないようにオマジナイをしておくの。」

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 良が差し出したマジックで歯ブラシに「千晴」と書いた。
  「こうしておけば彼女がいると分かるでしょ。誰か女の人が来ても、二度と来るのを嫌がるわ。」
  「無駄だよ。」 「どうして?」
 「俺の母さんの名前だと言い訳するから。」
  「リョウ君ってホントに意地悪ねぇ。」
 「だって君の困った顔が見たいもん。」
  「バカ、リョウ君のバ〜カ、もう知らない!」 彼女の甘えた表情に良はうっとりした。

 千晴との出会い142 通算457  
 千晴を先に風呂に入れ、彼女が湯船に浸かったタイミングをはかった。千晴は背中を向けていた。彼は二人にはやや狭い湯船に入った。
 横から見られる状態になった千晴は慌てて後ろを向こうとしたが、彼女を抱きしめてそのままの状態に保った。
 良はキスをしながら豊かな膨(ふく)らみに手をやった。
 千晴はそれを待っていたかのように積極的に舌を絡ませた。彼の下半身が身体に触れるとモゾモゾ身体をよじった。

 千晴との出会い143 通算458
 良は彼女を正面に向かせて、固くなった乳首に舌を這わせた。
 「あ〜ん」−彼女は切ない押し殺した歓喜のため息を断続的に漏(も)らした。
  「リョウ君…リョウ君…大好き…大好き…。」 良は限りない愛しさを感じられてやまなかった。 しばらくの間、二人は湯船で抱き合った。
  「リョウ君、背中を流してあげる。」
 「ホント?嬉しいなぁ。」 彼女は嬉々(きき)として彼の背中を洗ってくれた。

 千晴との出会い144 通算459
  「お返しだ、キャピー。」 「恥ずかしいからヤダ!」 嫌がる千晴の背中にたっぷり石鹸を塗った。 ヌルヌルした石鹸の感触に感じているのか、
  「ア〜ン、ダメ、もうダメ…。リョウ君もうダメ…」 うわ言のように切ない声をあげた。 良は彼女の背中を抱きしめた。
 ジェラシーの塊(かたまり)のような千晴の裏を返せば、それだけ良への思いが強い。その千晴がすべて良の腕の中で歓喜(かんき)に悶(もだ)えていた。

 千晴との出会い145 通算460
  「ベッドは狭いけど…。」 セミダブルのベッドに二人は横たわった。上気した千晴がこれから起こる出来ごとに、恐怖を感じているようであった。ガタガタ小刻みに震えていた。
  「本当にいいんだね…。」 無口になった千晴は小さく頷(うなづ)いた。舌を絡ませている間もその震えは止まらなかった。
 良が彼女の身体を割って入ろうとすると、彼女は身体を自然に上にずらせた。無意識の反応だった。
 何回か試みたが成功しなかった。


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          第2章 千晴との出会い(BN)
 (0316〜) 華やかなキャピー(佐藤千晴)との出会い「広松食堂」
 (0320〜) 千晴との初めてのデート
 (0329〜) 美しいゆえにに悩むキャピー
 (0351〜) 2回目のデート「蕎麦処 高野」
 (0371〜) 海が見える高台で…
 (0383〜) 手打ちうどんに喜ぶキャピー「手打ちうどん 玉の家」
 (0396〜) 過去に縛られる良への怒り
 (0410〜) ラブホテルでの絆
 (0431〜) 夜の初デート「和風居酒屋 参萬両」
 (0439〜) 良のアパートで…。
 (0471〜) 恵理・美紀と「手打ち蕎麦処 遠山」 
 (0481〜) 美紀のマンションで長い夢
 (0531〜) キャピーと初めての1泊旅行
 (0545〜) 2人で入った寿司屋に美津子が…「寿司 徳岡」
 (0556〜) 美紀と得意先に営業
 (0582〜) キャピーとの別れの真相
 (0611〜) 美紀が恵理に宣戦布告「イタリア料理 ローマ」


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